世界初の再生血管移植 4歳女児手術成功
足の静脈細胞を培養 東京女子医大
東京女子医大日本心臓血管研究所の今井康晴教授、新岡俊治講師のグループは(平成12年5月)
十二日、患者自身の細胞を増殖、再生させて作った血管を、重い先天性心疾患で肺動脈が詰まる肺動
脈閉鎖症の女児(四つ)に移植する手術を実施した。女児の容態は安定しているという。患者の自己
細胞で生体組織を作り出す「再生医学」の手法による血管移植は世界で初めて。再生医学は、拒絶反
応の恐れがない次世代医療として注目されており、その実用化の一歩として、期待を集めそうだ。
心臓から肺に血液を送る肺動脈が欠損したり狭くなっている場合、血液が酸素を十分に運ばず、発
育などに影響が出る。このため、従来、人工血管や人工布、自分の心臓の心膜を使った血管で肺と心
臓をつなげる手術が一般的だった。
しかし、異物であるため血液が流れにくくなったり、成長で血管のサイズがあわなくなり、約十年
後には再手術が必要になるなどの問題があった。
手術を受けた女児は心臓の形に異常があるうえ、右肺につながる肺動脈が狭くなって詰まり、右肺
の二分の一を使うことができなくなっていた。放置すれば心不全の危険もあったため、再生血管を使
った手術に踏み切った。
事前に、女児の足首の静脈からとった細胞を培養。直径約一センチメートル、長さ二センチメート
ルの筒状の生体ポリマーに植え、”再生血管”を作った。手術では詰まっている肺動脈を切り広げ、
その上に”再生血管”をあててふさいだ。
超音波で確認したところ血液が流れていた。再生血管に使用した生体ポリマーは約二ヶ月間で体内
に吸収される。約一ヶ月後、再度血液が流れているかどうかカテーテル検査で確認したうえで女児を
退院させるという。
同グループは子犬を使った動物実験で、自己細胞で作った再生血管が子犬の成長とともに大きくな
っていることを確認、昨年四月、学内の倫理委員会の承認を得た。同グループは同様の方法で心臓弁
の再生も研究しており、「再生医学」の実用化の可能性が広がっている。
国立循環器センターの八木原俊克・心臓血管部長の話 「心臓血管の臨床応用が本格的になると、
患者への負担が少なくなる。意義は大きい」
平成12年(西暦2000年)5月13日(土)産経新聞掲載