金属元素発見の歴史
現在80種以上もの金属元素が確認されているが、今から約300年前まではわずか10種類の元素し
か発見されていなかった。17世紀に入り、ボイルらによってそれまでの卑金属を金に変えるという
錬金術的思考から脱却し、近代的元素観が育ってきた。とくに、ラボアジエをはじめとする化学者に
より分析化学の理論と技術が発達し、18世紀には、それ以前の数千年分に値する元素が、おもに鉱
石を丹念に分析した結果発見された。金属元素の発見された年代を見ると、特定の年代に偏っている
ことに気がつく。これは、新しい元素発見方法が開発されたことで、それまで発見できなかった元素
が続けて発見されたからである。
ラボアジエ
発見された金属元素と発見方法
太古 Au,Cu,Ag,Sn,Pb,Fe,Hg
錬金術時代 Zn,Bi,Sb
1700年代 Co(1735年),Pt(1748年),Ni(1751年)
Mn(1774),Mo(1778),W(1783),Zr(1789)
U(1789),Ti(1791),Y(1794),Cr(1797),Be(1798)
1800年代 V(1801),Nb(1801),Ta(1802),Rh(1803),Pd(1803)
Ce(1803),Os(1803),Ir(1803),K(1807),Na(1807)
Mg(1808),Ca(1808),Sr(1808),Ba(1808)
Li(1817),Cd(1817)
Al(1825),Th(1828)
La(1839),Er(1843),Tb(1843),Ru(1845)
Cs(1860),Rb(1861),Tl(1861),In(1863)
Ga(1875),Yb(1878),Sc(1879),Sm(1879)
Ho(1879),Tm(1879),Gd(1880),Pr(1885)
Nd(1885),Ge(1886),Dy(1886),Po(1898)
Ra(1898),Ac(1899)
1900年代 Eu(1901),Lu(1907)
Pa(1918),Hf(1923),Re(1925)
Tc(1937),Fr(1939)
Np(1940),Pu(1940),Cm(1944),Am(1945)
Pm(1947),Bk(1949)
Cf(1950),Es(1953),Fm(1953),Md(1955),No(1958)
Lr(1961)
電気化学による元素発見
18世紀末に発見されたボルタの電池を用いて、イギリスのデービーがアルカリ金属元素(K,Na)や
アルカリ土類金属元素(Ca,Sr,Ba)を電気分解によって単離した。また、マグネシウムMgや、非金
属元素のホウ素Bや塩素Clの発見者も彼で、発見は1807年〜1810年に集中している。
デービー
スペクトル分析による元素発見
18世紀中頃からさまざまな炎色反応が確認され、元素がそれぞれ固有のスペクトルを出すことが知
られてきた。これを利用してブンセンとキルヒホフがセシウムCs、ルビジウムRbを発見した。1860
年〜1861年のことである。これ以降、新元素の確認にこの方法が用いられて、研究の効率が飛躍的
に上がった。
周期律からの推測による元素発見
1869年にメンデレーエフとマイヤーによって提唱された元素の周期表には空欄があった。その空欄
に当てはまる元素の性質を推測し、ガリウムGa、スカンジウムSc、ゲルマニウムGeが発見された。
発見された元素の性質は、メンデレーエフの予言した性質に非常に近かった。
メンデレーエフ
放射性元素の発見
1898年に、キュリー夫妻はウランの鉱石がウランよりも強い放射能を有していることに気づき、そ
の分析からポロニウムPo、ラジウムRaを発見した。これ以降は放射性元素が次々と発見されるよう
になった。
人工元素
20世紀に入り、ラザフォード、ジョリオ、キュリー夫妻らにより、元素の種類を変える原子核反応
の理論が提唱された。1937年に粒子加速器(サイクロトロン)により、テクネチウムTcが初めて人
工元素として合成された。それ以降10種類以上の元素が人工的につくられている。
ラザフォード
放射能
ベクレル(フランス、1852〜1908)は、ウラン鉱石が何もしないのに写真乾板を感光させること
を見いだし、未知の放射線が出ていることを発見した。(1896)その後、キュリー夫妻(フランス、
マリー:1867〜1934、ピエール:1859〜1906)などにより、放射線を出す物質が次々と見いだされ、
放射線に3種類あることやそれらの本体が決定された。
放射能の機構については、ラザフォード(イギリス、1871〜1937)とソディ(イギリス、1877〜1956)
が、元素Aの原子核が壊れて他の元素Bの原子核になるとき放射線を出すのが放射能で、元素Bの原
子核はさらに壊れて元素Cの原子核になるというように次々と壊れていく系列ができることを論じ
た。(1902)