電磁気学の探究
電流と磁気
ギルバート(イギリス、1544〜1603)は磁石についての実験的研究を初めて行い、地球は大
きな磁石であることや、磁石の力と摩擦したコハクがちりや紙片を引きつける力(静電気力)と
は別のものであることを指摘した(1600)。しかし、電気現象と磁気現象の類似性は古くから注
目されており、2つの磁極の間ににもクーロンの法則が成りたつことから、電気力と磁気力の間
の何らかの関係が予想された。これはボルタ(イタリア、1745〜1827)によって電池が発明さ
れ(1799)、定常電流が得られて進展していった。
1820年は電流の磁気作用に関して実りの多い年であった。エルステッドは電流の磁気作用の
研究をして失敗を重ねていたが、あるときなにげなく磁針を電流と平行においたところ、磁針は
電流と直角の向きに向きなおった。また、電流の向きを逆にすると、磁針の向きも逆になった。
この報告を聞いたアンペールは、電流が磁気作用をもつとすれば、電流どうしも力を及ぼしあう
のではないかと考えてただちに実験にとりかかり、電流の流れている平行な導線はたがいに力を
及ぼしあうことを確かめた。さらに、導線を環状に巻いたソレノイドに電流を流すと磁石と同じ
はたらきをすることを見いだし、電流と磁石の関係を類推し、磁石は小さな円電流が集まったも
のであるという分子電流説を提唱した。さらに、ビオ(フランス、1774〜1862)とサバール(フ
ランス、1791〜1841)は、電流が磁石に及ぼす力を定量的に測定し、電流の磁気作用に関する
数学的法則を導いた。また、アラゴ(フランス、1786〜1862)は、電流を流したソレノイドの
中におかれた鉄が磁化することを発見した。この翌年、ファラデーは、電流の磁気作用を利用し
て磁石や電流の流れている導線を回転運動させることに成功した。
ファラデー ファラデー
電磁誘導
電流(電気)から磁気が得られることがわかると、逆に、磁気から電気(電流)が得られない
かと考えられた。初めは、定常的な電流で磁気が得られるのならば、静止した磁石で電流が得ら
れるのではないかと考えられた。この予測にもとづく実験がことごとく失敗した後、これに成功
したのはファラデーである。運命の日(1831年8月29日)、彼は環状の鉄心に導線を巻きつけて2
つのコイルを作り、一方に電池を、他方に検流計をつないで、後者のコイルに電流が流れないか
を試みていた。スイッチを入れて検流計を見ても何の応答もなかったが、スイッチを切る瞬間に
ふと検流計を見ると針がぴくりと動いた。不思議に思いスイッチを入れるとその瞬間にも針が動
いた。彼はさらにくわしく調べ、電流が変化するとき、コイルの位置を動かすとき、また、1つ
のコイルのかわりに磁石を使うときに誘導電流が生じることを見いだし、電磁誘導の法則を発見
した。
その後、ヘンリー(アメリカ、1797〜1878)は、コイルに流れている電流を切ると火花がと
ぶことから自己誘導を発見し(1832)、レンツは、誘導電流の向きを決めるレンツの法則を発見
した(1834)。ファラデーは電磁気現象は力学とは別の独立した現象と考え、電気力線や磁力線
の概念を考えだした。
電磁気現象の統一
電気現象と磁気現象が密度に関係していることがわかってくると、電磁気現象を統一的に説明
する理論が追求された。これに成功したのはマクスウェルである。彼は電場と磁場の概念を導入
し、クーロンの法則、電流の磁気作用、電磁誘導などの電磁気現象を統一的に表す基礎方程式を
導いた(1864)。彼はこの方程式から、変動する電場と磁場は空間へ波動となって伝わることを
導き、電磁波の存在を予言した。さらに、基礎方程式から電磁波が真空中を伝わる速さを求め、
これが光の速さに一致することから、光の本性は電磁波であるを予言した。
マクスウェル
マクスウェルの予言は彼の死後ヘルツによって証明された。彼は講義実験の際、コンデンサー
の放電が近くの放電間隙をもつループに火花を飛ばすことに気づいた。これは、コンデンサーの
放電の際に発生した電磁波をループが受信したことを示している(1886)。その後、彼はさまざ
まな実験を試みて電磁波の存在を証明し、その性質は光とまったく同じであることを示した。
(1888)それから10年もたたずに、マルコーニ(イタリア、1874〜1937)は電磁波を用いた無
線通信に成功したのであった(1895)。